【映画】オットーという男 感想(ネタバレを含みます)

【映画】オットーという男 感想(ネタバレを含みます)

あおとんぼくん

ものすごく静かで穏やかな物語でした。
最高。

目次

映画情報

監督   :マーク・フォースター
タイトル :オットーという男
出演者  :トム・ハンクス
     :トルーマン・ハンクス
     :マリアナ・トレビーニョ
     :レイチェル・ケラー
制作年  :2023年

あおとんぼくん

primeビデオで視聴できます。
他でも色んなところで観れるっぽい。

あらすじ

規則を守らない人間が嫌いな老人、オットー。

日課のパトロールによりゴミ捨て場、ゲートの閉門状況をチェックしていく彼は、近所の人から挨拶をされても表情を変えない、偏屈な人物だった。

そんな彼が会社へと出勤する。退職のために顔を出しただけだが、従業員からは疎まれていたのか労いの言葉も少なかった。自分の顔が表現された退職記念のケーキに、顔を真っ二つにするようにナイフが入る。それを見届ける事もなく、憤慨したオットーは帰路に着いた。

自分一人が住む自宅に帰るなり、彼は電気も電話も解約する。身辺整理をしていく彼は身なりをしっかりと整えると、一枚の硬貨を手にした。

そして彼が向かったのは、自ら用意した首をくくる用の縄の前。その輪に首を通そうとしたところで、外の異変に気が付いた。

見知らぬ顔が、無遠慮にも私有地の駐車場に車を停めようとしていたのだ。

憤りを露わにしてオットーが注意しに行くと、どうやら彼らはここに引っ越してきた新しい住人だったようだ。

旅立ちを邪魔されたオットー。越してきた陽気な夫婦は彼の都合もそこそこに、地域に馴染もうと積極的に彼に関わっていく。それを邪険にしつつも、どこか抜けてる夫婦を放っておけないオットーは、彼女達に邪魔されながら自分の旅立ちを遂行しようとするが……というお話。

ネタバレあり感想

あおとんぼくん

ネタバレを含むので観た人向けです!
既に観た人、最初から今作を観るつもりがない人だけが開いてね!
(ほんとは観て欲しいけど、観ずに結果だけ知りたいっていう人も
 たくさんいるようなのでまぁ仕方ないですね!)

ストーリーについて

※ネタバレ注意

・ものすごく静かで穏やかな物語

繰り返しになりますが、やはりこれ。

大きな問題がドカンと来るようなタイプじゃなくて、どこまでも静かに進んでいくタイプでしたね。

盛り上がりどころで一気に「わーーーーーー!」ってなる感じではなくて、ひたすらオットーという男の人生を見つめていくお話でしたね~。

こう聞くと退屈そう、と思うかもしれないですが、観た人からすればこれが驚くほど面白いんですよね!

オットーに関する謎が少しづつ少しづつ明かされていき、物語が進むにつれて彼への関心が高まっていく。ダンサー・イン・ザ・ダークとかキャスト・アウェイもそうなんですけど、一人の人間にフォーカスした物語ってどうしてこうも我々を惹き付けるんでしょう!

最初はいかにもステレオタイプな老害って感じのオットーでしたが、マリソル夫婦と関わる事で元々の生真面目な性格が表に出てきましたね。それによって、「あとは終わりを迎えるだけ」だったこの物語が次第に彩られていく事になります。

・人が生きていくには、人と関わらなければならない

そんな当たり前な事を教えてくれる本作。

当たり前ではあるんですけど、これって色んな意味がありますよね。

人間は自分一人ではできる事に限りがあります。仕事一つにとってもそうですよね、生産と販売は別ですし、整備と営業は別です。どちらかだけでは仕事が成り立ちません。

そういう意味でもありますが、生活にしても同じ事が言えますよね。衣食住にしてもそう、私達は誰かが作ってくれた衣服を着て生活しているし、誰かが販売してくれた食材(あるいは料理)で食事をし、誰かが用意してくれた住居に住んでいます。

ではこの物語の場合はどうなのかと言うと、そういったものたちとは別に、人間関係の大切さを説いてくれていました。

人間関係と言っても、それを良好に保て、といった説教くささではなく。

独りぼっちでは先が見えなくなる、という事を、オットーを通して教えてくれました。

人生の中で関わる相手が自分自身ただ一人だけだと、目的を失うと同時に何もなくなってしまうようです。私はまだ「目的を失う」状態になった事がないんですが、想像はできますからね。その空恐ろしさはわかる気がします。

働いている状態、あるいはやりたい事がある、もしくは趣味があるのであれば話は違うと思います。しかしどうでしょう、もしもそれらが無い時に、人生の中で目的としていた事が無くなってしまったとしたら。

次の目的を決めればいい、そう思うかもしれません。

でも私達がオットーと同じように、再就職できるような年齢でもなく、友達もおらず、趣味もなく、唯一拠り所であった大切な人を喪ってしまい、何もなくなってしまったとしたら。

ゾッとしませんか? そんな恐ろしいこと、絶対に経験したくないですよね……。

そんな状況に陥ってしまったオットー。彼は作中で何度も旅立とうと行動に移しますが、何の因果かその度に邪魔が入ってしまいます。それでも彼の中では旅立つ事は決定事項で、あの手この手で実行しようとするんですけど、それらが全てうまくいかないんですよね。

ある意味では運がいい・・・・・・と、言えるのかのもしれない?

そんな彼が最終的には考えを変えるに至るんですが、なぜそうなったかと言えば、それはもう彼の周りにいた「他の人達」のおかげですよね。

その中には色んな人達がいたんですけど、その人達との新しい関係、ひいては(※それがもとになり)そこから見える未来が想像できるようになった事で、生きる事に前向きになれたんだと思います。

人が自分で旅立ちを決意するのって、何も絶望だけではないんだな、と思いましたね。虚無もそれと同じくらい人を追い込むんだと、そう感じました。

などと長々書きましたが、別にこの物語って暗いお話じゃないんですよ。もしもまだ観てない人がいたとしたらそこは安心して下さいね。胸糞要素とか全然ないので!

キャラについて

※ネタバレ注意

・本作の主人公。決まり事を守り、必要以上に人とは関わらないようにするオットー

観た人に聞くんですけど、皆さん彼の事どう思いました? 身近にこんな人がいたらどうでしょう。

正直私は苦手です(苦笑)

何話しても仏頂面の人って怒ってるのか機嫌悪いのかわからないので出来れば関わりたくないんですよねぇ⋯⋯。

ただ経験上、そういう人って大体怒ってないし機嫌が悪いわけでもないんですよね。だから最近はもう、そういう顔付きなんだなって思うようになりました。

オットーもそういう感じでしたね。規則違反を見付けると怒ってましたけど、まぁそれに関しては分かる話ですのでいいとして。

あの小さな地域において、ご近所さんの存在はとても大きいようですよね。その中に引っ越してきたマリソル夫妻に対しても、他のご近所さんに対する態度と変わらない態度で接するオットー。

彼は積極的で陽気な夫婦、特にマリソルさんの勢いに根負けするような形で人付き合いをしていくようになりました。

嫌々ながらも要求を呑んだり、渋々ながら用事に付き合う。彼の表情は変わりませんが、特に怒っている事もなく普通に接していましたね。

態度が軟化する様子は見られませんでしたが、付き合いを重ねる内にオットーの心境に変化がありました。

旅立ちの決心は変わらないものの、自分の内を晒すようになりましたよね〜。あの変化から一気に周りの人間関係が動き出しました! あの辺りからの流れ本当に好き⋯⋯。

堅物でユーモアも話さず、自分の人生に見切りを付けた男。しかし周りの人間関係によって旅立ちは幾度となく邪魔され、そして彼の気持ちが向かった先は⋯⋯。めちゃくちゃ良かった! こういう人間がテーマの話って、どうしてこんなに心動かされるんでしょうね!

・勢いと積極性がすごい、メキシコ生まれのマリソルさん

もうめちゃくちゃ好き!!!!!!

私こういう人すごい好きなんですよね⋯⋯。

天真爛漫というか無邪気というか、元気で明るく、そして勢いがある。嫌じゃない図々しさ。

オットーに閉め出されそうになった時、扉を足で防いだシーンなんて最高でしたね!

さてそんなマリソルさんですが、作中では一番オットーと深く関わります。他にもオットーと関わりを深めていくキャラはいるんですが、オットーの心境変化の立役者としてはかなり重要な立ち位置なんじゃないでしょうか。

このマリソルさんはですね、とにかく押しが強いんですよ。そしてオットーも、口ではなんだかんだ言いながら人が良いもんですから、ついつい助けてしまうんですね。

元々人から離れるように振舞っていたオットーでしたが、このマリソルさんの無遠慮とも言える行動に振り回されて、人付き合いの楽しさをまるで思い出すかのように体感していくんですね。

マリソルさんの家族構成も大変良かった。とてもいい方向に作用したものですから、観ているこちらとしても胸が暖かくなるような場面がちらほらありました。

個人的な話ですが、私が好きな人柄だったっていうのもあってこの映画の中で最も好きなキャラですね!

生きるために必要なもの

※ネタバレ注意

これも繰り返しになってしまうんですけどね。

人が生きるために必要なものって、人間関係なんだなって気付かせてくれる物語でした。

もっと言えば人との繋がり⋯⋯ですかね?

皆さんはどうでしょう、周りにそういった、人生を一緒に楽しんでくれる人はいるでしょうか?

私は一人しかいないんですけどね、その友達がいる事でかなり人生を楽しく過ごせてます。

その友達がいなかったら全て一人で行ってたであろう旅行とか、食事とか。時にはこちらの都合を考えず無理矢理付き合わされる事もありますけど⋯⋯まぁそれはそれで、楽しんでしまえばこっちのものですからねw

結婚していてパートナーがいるのであればもちろん、最近では生涯独身でいいと考える人達も増えてきてますので、結婚はせずに気の合う友達と一緒にいるというのも良いのではないでしょうか。

友達、とは言いましたけど、ぶっちゃけ職場の同僚や先輩後輩でもいいと思うんですよね。関係性はそこまで深く無いかもしれませんが、「その時」を共にした、という意味であればその人も私達にとって大切な隣人である事に変わりはありませんもんね。

最初にも話した通り、もしも私達が定年を迎え、仕事を失い生活していく事ができたとしても、趣味もなく友達もおらず、伴侶もいないのであればその後の余生とはどんなものになるのでしょうか。

あまり想像したくない話ですが、私はたぶん、基本的には何ともないと思うんですけど、時々死にたくなるほど辛くなるんだろうなぁと思います。

なんかこう、たまにありませんかね?

無性に人に会いたくなるような、誰かと話したいような。かつては人との関わりがあっただけに、それを失ってしまったんだと思うと途方もない孤独感にさいなまされる事が。

数年に1回そういうの経験するので、たぶん私は途中で堪えられない時がくるんじゃないかなーって思ってます。

⋯⋯うーん、やっぱりあんま考えたくない話でしたね〜〜〜〜〜〜〜〜〜! やめやめ!

微妙だったところ

※ネタバレ注意

⋯⋯あったか?

あったかな⋯⋯この記事書いてるのが、見終わって2、3日経った時なので、もう1回見直したらあるかもしれません。

正直この映画に関しては、そういう粗探しとかするような(ヤな言い方ですが)空気の物語でも無かったですし、個人的には気になるところもなく大満足な物語でしたね! 超オススメです!

終わりに

映画「オットーという男」についての感想でした!

既に観た方、まだ観ていない方、いかがでしたでしょうか?

一応観た事がある人前提での記事となっていますが、観てなくても中身を読んだ方もいらっしゃると思います。そういった方で、もしも興味が出たのであれば是非ご自身でも観てみて下さいね!

やっぱり人の感想を聞くのと自分で観たのとでは感じる物も変わってくるでしょうし、物語を味わった時の感想、意見っていうのはその人だけのものじゃないですか。だから観た事がない人にも観てもらいたいんですよね。時間がない、本当に面白いものだけ観たい。そういった感情はわかるんですが、個人の嗜好って人それぞれですからね、私には合わなくても「貴方」には合うかもしれませんし。

だから、皆さんの感想も是非聞かせてください!

既に観ていてこの記事を読んだ方。

この記事を読んでから自分でも観てみた方。

内容の是非は問わず、色んな人の感想を聞くのも楽しいですし、ぶっちゃけそれが目当てなところもありますし!

感想を言い合うのも含めて、映画の楽しいところですからね。

それではこのあたりで。読んで頂きありがとうございました!

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この記事を書いた人

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